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「インナー×アウター」でまちを盛り上げる ~八王子市のシティプロモーション戦略~
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※ 本ページは、2019年10月10日株式会社第一法規「議員NAVI」に掲載された記事の一部を改変して転載したものです。
ブランドメッセージ「あなたのみちを、あるけるまち。八王子」
八王子市は、全国に、そして世界に誇れる数多くの地域資源があるからこそ、「結局、どこがいいの?」と聞かれると説明が難しいまちです。このため、様々な所管がまちの魅力を発信していても、統一感のあるイメージ作りにつながっていませんでした。
また、目指すまちの姿、すなわち「どんなまちになっていきたいか」というビジョンも、みんなが思い描ける形になっていませんでした。このことは、様々な主体が力を合わせて魅力的なまちをつくっていく上での壁となっていました。
1 ブランドメッセージ つくろう・えらぼうプロジェクト
2018年、八王子ならではの魅力を一言で表し、目指すまちの姿を宣言する言葉、「ブランドメッセージ」をつくるためのプロジェクトがスタートしました。
まず、20人の公募市民と、八王子出身のコピーライター、株式会社Rockaku森田哲生氏のコラボにより、4つの候補を作成。
4つの候補について、12月に「市民総選挙」を実施。ウェブ・投票所に加え、小中学生による投票も行い、全部で25,000もの票が集まりました。
選ばれたのは、特に子どもたちの支持率が高かった「あなたのみちを、あるけるまち。八王子」。色とりどりの地域資源とやわらかい空気の中で、誰もが、それぞれのしあわせを見つけてあるいていける。そんなまちの魅力を表しています。
→ プロジェクトの詳細レポートはこちら
→ 発表会のレポートはこちら
2 ブランドメッセージの2つの機能
(1)魅力発信ツールとしての機能
動画・イベント・チラシ・窓口のやりとりなど、様々な場面で常に「あなたのみちを、あるけるまち。」としての魅力を伝えることが、一貫したブランドイメージづくりの前提となります。
(2)ビジョン宣言機能
ビジョンとは、目指すまちの姿を、みんなが思い描けるようにするものです。
そして、ビジョンの宣言とは、市のあらゆる取組みを、「あなたのみちを、あるけるまち。」を実現するための手段として再定義することです。
これをもとに、施策間の優先順位や重視すべき成果指標を明確にし、より効率的な行政運営を目指していきます。
また、一緒に目指したいゴールを示すことで、職員のモチベーションはもちろん、市民の地域に関わろうとする意欲も盛り上げていきます。
八王子、ちょっと変わり始めてます。
1 市役所が歩き始めました!
様々な広報媒体やイベントを通じてブランドメッセージを周知する取り組みに加え、八王子をもっと「あなたのみちを、あるけるまち。」にするための取り組みも始まっています。
(1)あるける市役所づくり(財務部)
市役所本庁舎玄関の「八」の字が、ロゴマークと同じ靴を履きました。
これは、「あなたのみちを、あるけるまち。」の実現に向けた市の決意を形にしたものです。
さらに、訪れた方が「迷わずあるける市役所」をめざし、案内表示の改善も進んでいます。
(2)中学生サミット(学校教育部)
市立の全38中学校の代表が集い、「八王子を、もっと『あなたのみちを、あるけるまち。』にするために、わたしたちにできること」を話し合いました。
→ くわしくはこちら
(3)吸う人も、吸わない人も、心地よくあるけるまちへ(健康部)
様々な人と文化が交わる八王子だからこそ、それぞれが気持ちよく過ごせるまちを、皆さんと一緒に目指しています。
その一環として、ブランドメッセージ・ロゴマークを活用した、受動喫煙防止対策の啓発動画を作成しました。
→ 動画はこちらから
(4)施設見学会「いろんなみちを、のぞいてみよう!」(総合経営部)
まちづくりへの提言に活かしていただくため、審議会等の市民委員を対象にバスツアーを実施。
地域が抱えるさまざまな課題の解決に向けて、自分のみちをあるいている方々の姿に触れていただきました。
→ 写真付きレポートはこちらから
2 まちの皆さんとのコラボも始まっています
ホームページにロゴマークのデータを公開し、広く市民・事業者の皆さんにも使っていただいています。
→ 活用事例の詳細はこちら
また、JR東日本とのコラボレーションにより、八王子駅の「八」の字に、ロゴマークに合わせて「靴」を履いてもらいました。
市と駅が一体となり、まちの玄関口である八王子駅から「自分らしいみちをあるいていこう!」というメッセージを発信しています。
→ 詳しくはこちら
「あるけるまち」に向かうみち ~八王子市の戦略~
1 シティプロモーションは目的ではなく、手段の一つ
シティプロモーションの定義や目的は自治体により様々ですが、八王子市の場合、目的は、「人口減少社会の中でも市民のしあわせがずっと続くこと」です。
地域の持続的経営に向けては、使えるお金を増やすため、観光客の誘致や企業支援、税外収入の確保など、全国で様々な取組みが行われています。
一方で、行政の効率化、健康寿命の延伸、民間資本の活用など、コストを下げるアプローチも大変重要です。
さらに、長期的な人口構造の変化を踏まえれば、「行政による地域経営」という前提によらないアプローチも必要になってきます。
シティプロモーションもその中の一つで、地域にかかわろうとする意欲を高め、まちの担い手を増やしていくことを目指す取り組みです。
2 戦略の全体像
八王子市は、「ブランディング」を土台にして、具体的な「行動変容」に向けた施策を積み重ねていくという、2段階の戦略を考えています。
第1段階 土台をつくる都市ブランディング ― 2つのアプローチ ―
(1)「ブランド価値の向上」に向けた取組み
市民の皆さんにもっと「あなたのみちを、あるけるまち。」としてのしあわせを実感してもらうため
- 全職員が、「私の仕事は、『あなたのみちを、あるけるまち。』をつくることなんだ」と意識し、普段の仕事にちょっと工夫をプラスする。
- 「 あなたのみちを、あるけるまち。」実現にどれだけ貢献できるかを、施策の優先順位判断や人財獲得・育成・活用における共通の「ものさし」とする。
- ブランド価値向上に向けた工夫を積極的に評価・推奨する文化をつくる。
といった内部の変化を進めていきます。
シティプロモーション担当課である都市戦略課は、全体の戦略を描くとともに、庁内の意識醸成に向けた取組み(インナープロモーション)を主導する役割を担っています。
2019年度の前半は、全職員向けのeラーニング研修や、全部長職を対象としたワークショップ型研修を実施したほか、名刺へのブランドメッセージ印刷等により職員自身をメディア化する取組みを進めてきました。
今後は、自らの仕事と結びつけてビジョンを理解して実践に移していける職員を増やすため、さらに進んだインナープロモーションを検討しています。
(2)「ブランド評価の向上」に向けた取組み
(1)と並行して、「あなたのみちを、あるけるまち。」としての魅力を市内外に届ける取組み(アウタープロモーション)を進めます。
ここでは、各所管がブランドを意識して、「あなたのみちを、あるけるまち。」を構成する地域資源・施策を発信していくことがメインとなります。
都市戦略課は、ブランドメッセージの周知や「暮らし」の魅力発信など、特定分野に限定しないプロモーションを担っています。
(3)ブランド価値を守る取組み
どの自治体の職員でも、誤った情報発信や失礼な態度、法令に反する事務執行など、市民に「不信」、「不安」といった印象を与えないよう心がけていることと思います。
都市ブランディングに当たっては、これに加えて、ブランドメッセージと矛盾する印象や、「残念な」印象をなくしていくための、情報発信の質のコントロール(ブランドマネジメント)が求められます。
都市戦略課では、今年度から民間での実務経験者を任期付職員として採用し、ロゴマークの活用や広報媒体のデザイン、イベント企画など、各所管の相談に対応できる体制を整えました。
今後は、ブランドを意識した情報発信のガイドラインづくりや、各所管が管理するメディアのブラッシュアップなど、全市的に統一感のある発信を行うための仕組みづくりが必要になると考えています。
※ 「ブランドマネジメント」は、一つ一つのリンクを機能させる前提となる
第二段階 担い手を増やす行動変容 ― 2つのアプローチ ―
今後数年で土台づくりに当たるブランディングを進めた後には、具体的な行動変容を促す取組みをそこに加えていきます。
八王子市が目指す行動変容、すなわち「誰に、どうしてほしいのか」は、大きく分けて二つです。
(1)「定住人口」減少緩和(市民に、住み続けてもらう取組み)
転出減や転入増に向けた取組みを行うことで、定住人口の減少を緩和するというものです。
実は八王子市は、今のところ積極的に転入者を増やす取組みには着手していません。
都内の自治体がよそから人口を「奪う」ことが、長い目で見て広域的な活力低下につながるおそれがあると考えるからです。
当面は転出・転入をする理由(又はしない理由)の詳細な分析を進めていき、転出者を減らすアプローチから着手する想定です。
(2)「活動人口」増加(市民に、まちに関わってもらう取組み)
まちの担い手になる市民を増やす取組みです。そのためには、以下の三つのステップを経る必要があると考えています。
- 幸福実感 → 「このまちだから、私はしあわせ」と感じる
- 感謝 → 「誰かのおかげで、私はしあわせ」と気づく
- 参画意欲 → 「自分も誰かのために何かしてみようかな」と思う
このうちステップ1は、ブランディングの取組みをしっかり進めていくことで達成できると考えています。
一方、ステップ1から2、2から3に人を動かすための施策については、明確な方法論の確立に至っていません。
引き続き内外のデータ及び事例の分析を行うことは当然ですが、きちんと効果が測定できる事業設計のもと、
小さな試行と検証を繰り返していくことも必要になると考えています。
戦略イメージ(ロジックモデル)
おわりに
まとめとして、八王子市が大事にしている二つのポイントをお話しします。
1 ゴールを明確に設定し、みちを描く
シティプロモーションには、「これをやれば必ず成功する」という確立された方法論はありません。
だからこそ、目指すべきゴールはどこか、どんなみちでそこに至るのかという地図を描くことがまず必要です。
そのうえで、地図どおりにあるけているか、そもそも地図は正しかったのかをリアルタイムで検証し続ける、
「GPS」にあたる仕組みを働かせていきます。
2 インナーとアウターを「両足」にしてあるく
つくった地図を実際にあるくのは、プロモーション担当だけではありません。
だからこそ、「アウター(対庁外)」のプロモーションに加え、
「インナー(対庁内)」のプロモーションを着実に進めることを大切にしています。
中から変えるアプローチは、遠回りに見えるかもしれません。
外から見える成果は、すぐには出ないかもしれません。
それでも、職員が変わり、組織が変わることがゴールに至る唯一のみちだと信じ、
皆さんとともに一歩一歩あるき続けていきます。
関連ファイル
「まちづくり研究はちおうじ 第13号(2017年度発行)」より抜粋 シティプロモーションの課題と展望(PDF形式 1,327キロバイト)
ブランドメッセージお披露目会(平成30年度市民フォーラム・未来を語る)の記録(PDF形式 22,405キロバイト)
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- 市長公室広報プロモーション課
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