生産者に、きいてみた。

都会の真ん中で、
命と向き合う

磯沼牧場

磯沼牧場の三代目・磯沼杏さん。牛とともに育った彼女は、一度は都会で働くことを目指しましたが、最終的に牧場を継ぐことを決めました。牧場への想いと、3年連続で乳質コンテスト(※)NO.1に輝いたプレミアムヨーグルトのこだわりをきいてみました。

※関東地方の酪農家が参加する「関東生乳品質改善共励会」の通称。乳質検査などを基に、高レベルな生乳を生産した酪農家が選ばれます。

コーヒー豆の香る牧場——都会で生きる工夫

住宅街を歩いていると、ふわりと漂ってくるのは、コーヒーの香り。香りの正体は、約100頭の牛たちが暮らす牧場だ。
牧場といえば、広大な草原を想像するかもしれない。しかし、磯沼牧場は住宅街のなかにあり、周辺では普通に暮らす人々の生活がある。都会の牧場には、都会ならではの工夫が必要だ。その象徴が、「コーヒー豆の香る牧場」である。
牛舎には、工場で廃棄されたコーヒーやカカオの豆や殻が敷き詰められている。周辺住民への配慮から父親が始めたこの取り組みは、今では磯沼牧場の象徴となった。コーヒー豆は臭いを吸収し、さらにコーヒーの良い香りが、牧場特有の匂いを和らげてくれる。

インタビュー写真1

 

牧場を継ぐと決めるまで

磯沼牧場は1952年、杏さんの祖父が創業し、2代目の父・正徳さんが事業を拡大した。杏さんの記憶の中には、いつも牛がいた。
朝起きれば牛の鳴き声。学校から帰れば、牛舎で遊ぶ日々。幼い頃の杏さんにとって、牛は自然な存在だった。しかし、大学進学で八王子を離れ、社会に出ることを考える中で、心に変化が訪れる。

大学で農業経済学を学んだ杏さんには、「いつか牧場を継ぐ」という思いがあった。ただ、その前に外の世界で経験を積みたかった。どんなに良い取り組みをしていても、経営が立ちゆかなければ続かない。そう考え、卒業後は経営コンサルティング会社への就職を志望し、内定を獲得していた。

しかし、卒業を目前に控えたある日、牧場の生産品を販売する店舗で、店長が退職してしまう。学生時代にアルバイトとして関わっていた店舗だった。アルバイト時代から赤字であることは知っていた。正直なところ、閉じるつもりで引き継いだが、閉店までの残り半年、せめて利益を出して終わりたい——そんな気持ちで、大学で学んだ経営の知識を実践に移していった。

「この土地がどれだけ希少なのか、地域の方からどれだけ必要とされているのか。離れて初めて気づきました。これを残していかなければ、と思ったんです」


ふたを開けてみると、業績は大きく改善。借入れを抱えた店舗だからこそ、ここで手を引くわけにはいかない。結局2年目も続けることを決め、内定は辞退した。現在、この店舗は閉じているが、そこで培った経験は今の牧場運営に活かされている。

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「かあさん牛」の名前が入ったヨーグルト 

約6,000坪の敷地には、ホルスタイン、ジャージーなど6種類の乳牛が、のびのびと暮らしている。牛舎の中では、牛たちが自由に歩き回り、好きなときに好きなだけ干し草を食べることができる。急坂を登った先に広がる開放的な敷地で、気持ちよく過ごす牛たち。この環境があってこそ、美味しいミルクが生まれるのだ。朝搾ったばかりのミルクは、その日のうちにヨーグルトへと生まれ変わる。 

「ミルクは生鮮品。魚や肉と一緒です」


杏さんはそう語る。鮮度へのこだわりは、牧場だからこそできる強みだ。
磯沼牧場のプレミアムジャージーヨーグルトは、「1頭厳選ヨーグルト」だ。蓋の上には、ミルクを出してくれた「かあさん牛」の名前がプリントされている。
使うのは、乳質が最も良いとされるジャージー牛のミルク。磯沼牧場では牛の健康診断を実施し、質を厳格に確認している。しかし、杏さんはそれだけでは満足しない。数字だけでは分からない部分があるので、実際に飲んで甘味を確認する。そうして選ばれた最良乳質の牛、その「お母さん」が出してくれたミルクだけでヨーグルトを作る。

「一回に20個しか作れない、本当に小さなロット。牧場の中でも一番乳質が良い牛を選んで、そのお母さんが恵んでくれたミルクだけで作る。それが、このプレミアムヨーグルトのこだわりです」


飼料や水にこだわり、無理に絞り出すのではなく、お母さんからお裾分けしてもらった濃いミルクだけを使用。その濃厚さは、まるでクリームチーズのよう。そのまま食べるだけでなく、バターのようにパンにつけて食べるのもおすすめ。これが、3年連続で乳質コンテストNO.1に輝いたこともある看板商品だ。

ふるさと納税の返礼品として届くのは、磯沼牧場こだわりの3種類のヨーグルト(外部リンク)。

【プレミアムジャージーヨーグルト】1頭厳選ヨーグルト。芳醇で濃厚な味わいのクリーム層は、クラッカーやパンに取り、お塩を少しかけて食べるのもおいしい。
【天使のほほえみスペシャルヨーグルト】 日本経済新聞「全国ごちそうヨーグルトランキング」で全国第4位に輝いた逸品。
【ジャージー飲むヨーグルト】 濃厚でコクのあるジャージーミルク100%。お腹にやさしいオリゴ糖を使用し、ほんのり甘めの仕上がり。

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東京のふるさと納税
——牧場が続くということの意味

子どもたちが牛に会える場所があるということ。家族連れが週末に気軽に訪れられる場所があるということ。命の成り立ちを学べる場所があるということ。それが、東京に牧場が続くということの意味だ。

「東京のふるさと納税って、ちょっと不思議な感じもあると思うんですけど(笑)。でも、買っていただくことによって、牧場という場所、そして酪農という産業が続いていくんです」


磯沼牧場では、日曜日に「乳しぼり体験教室」や「バター作り・モッツァレラチーズ作り体験教室」を開催している。月に1度は「カウボーイ・カウガールスクール」も。都内とは思えない広大な牧場で、子どもたちは牛と触れ合い、命を学ぶ。

「来てくださった方から『ここがあって本当に良かった』と言われたり、子どもたちが喜んでいる姿を見ると、私たちもここで牧場を続けている意味を感じます」


高尾山という観光資源を持つ八王子。しかし、意外と市内の人でさえ「牧場があるのは知ってるけど、行ったことない」という人が多い。今後は幼稚園、保育園、小学校とこれまで以上に連携を深め、八王子の子どもたちに牛がどれくらいのサイズなのか、ミルクがどうやってできるのか、実際に体験してもらいたいと杏さんは語る。

「せっかく八王子にこういう場所があるんですから、もっとたくさんの人に来てもらいたい。特に、八王子で育つ子どもたちには、『自分のまちに牧場がある』って、誇りに思ってもらえたら嬉しいですね」


祖父が始め、父が守り抜いてきた牧場。歴史を受け継ぎながら、そして杏さん自身も、自分ならではの強みを活かして牧場を盛り上げている。2児の母として、客層と同じ世代を生きているからこそ、一般消費者の目線で「こういうものがあってほしい」という思いをアイデアとして形にできる。牧場育ちでありながら、牧場に染まりすぎていない。その絶妙な距離感が、磯沼牧場の新しい魅力を生み出している。
朝搾ったばかりのミルクで作るプレミアムヨーグルト。その一口には、磯沼牧場の、そして八王子というまちの、温かな物語が詰まっている。

朝搾りのミルクで作る、特別なヨーグルト。
磯沼牧場から、あなたへ。


今回お話を聞いたのは
磯沼牧場 磯沼 杏 さん

(取材日:2026年1月)

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磯沼牧場

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