第25回都市景観セミナー

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第25回都市景観セミナーを開催しました

令和2年2月21日(金曜日)にクリエイトホール11階視聴覚室で、本市景観審議会委員である田口敦子さんをお迎えし、都市景観・屋外広告物について考えるきっかけづくりを目的として、屋外広告物について学ぶ都市景観セミナーを開催しました。

都市景観の一部である屋外広告物に着目し、屋外広告物とは何かといった基本的なことから、屋外広告物の成り立ちやオリンピック開催に向けた広告景観の動向など多岐に渡った内容について講師にご講演いただきました。

ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。

講師 田口 敦子さん プロフィール

 八王子市景観審議会委員

 多摩美術大学 名誉教授       加藤講師                                          

講演概要~講演テーマ:意外と知らない屋外広告物の基本とこれからの話~

 近年、メディアの多様化により新しい表現方法が生まれ屋外広告物の転換期を迎えており、また屋外広告物の歴史を知ることで現在の屋外広告物の成立ちが見えてきます。今回は、屋外広告物の目的やあり方、デザインなどの基本的なことから、屋外広告物の起源から現在までの変遷などについて講演いただきました。


 説明1     説明2

1.屋外広告の目的とは

 「広告」とは、商業・企業活動の「存在」、あるいは商品・営業内容の「存在」を明示するものであり、その存在を示した情報は「屋外広告物」または「自家広告」と呼びます。個人住宅の表札も周辺に個人の「存在」を明らかにするものであるため、「自家広告」に当てはまることになります。

2.屋外広告とは

 屋外広告物は大きく分類すると公共サインと商業サインの2種類に分けられます。公共サインは公共が設置するサインとなり、商業サインは公共以外が設置をするサインとなります。商業サインは住宅の表札のような、自らの所有物に自らの「存在」を示す「自家広告」と自らの所有物に第三者の広告物を表示する「第三者広告」に分けられます。
 昭和24年には、屋外広告物法が制定され法律にも屋外広告物の定義が示されています。

3.広告の歴史は屋外広告物から始まる

 人類最古の広告は、紀元前の地中海沿岸地方で行われていた「タウンクライア」の声による告知と言われており、人の声を広告物として使用していました。人の声を広告物として使用することは、街頭での活動など現代にまで繋がっていきます。
タウンクライア
 日本で最古の広告は、701年に施行された「大宝律令」の中で定められている「肆標(いちくらのしるし)」だと言われています。市場では店ごとに営業内容を示した広告を表示することと定めています。
 室町時代以降、都市の拡大形成とともに屋外広告物も整ったものになっていきます。洛中洛外図にも店前で屋外広告物が表示されているのを見ることができます。この当時は、識字率が高くないので、のれんや看板にその店のマークや取り扱う商品の絵などを示すものが多かったようです。
 1600年代以降、屋外広告物が発達しはじめます。都市化が進み江戸に人が集まると商家も増え、町人文化をとりいれたユーモアある看板が増えていきました。洒落や謎かけで表示された広告物や取扱う商品自体の模型を表示する広告物を出すようになっていきます。1700年代以降は印刷メディアが発達し、ポスター形状の広告物も増えていきました。
 大正時代から昭和50年代にかけては日本独自の広告物の掲出方法が増えていきます。各商店が自家広告の他に取り扱う商品の製造企業名などを載せた広告物を店前に掲出するようになりました。これが第三者広告となっていきます。
 昭和初期からは新しい技術を使用し、イルミネーションや宣伝カーなどの話題性を持たせた広告物も多く出回るようになっていきました。

4.景観形成と屋外広告のあり方・デザイン

 屋外広告物は時代ごとの文化を取り込んでいき進化をしてきました。近年では2005年に「景観法」が施行され、景観は国民共通の財産との認識によって、その地域の歴史、伝統、文化を反映させた美しい景観を定着させようとする時代になってきています。このような時代もあり、都市の景観整備を検討する際、屋外広告物が問題視されることが多くなってきています。屋外広告物の色彩や形態が景観へ大きな影響を与えることがあるからです。
 景観法の具体的な施策の中では、屋外広告物による景観形成を進めていくため、区域を定め屋外広告物の表示に関する共通事項や色彩に関し一定の制限をかけて、より良い景観を造っていけるよう取り組んでいます。

5.広告の目的を活かす「デザイン」の要素

 屋外広告物を設置する場合は、どの位置にどのように設置するのかをまず把握すること、造形要素である「色彩」「形態」「素材」の特性も理解しておくことが重要になります。
 広告物の目的をブレずに伝えるために、社名ロゴなどのシンボルマークを活用したり、外国人旅行者でも理解できるピクトグラムや造形看板を活用したりするなど、表現方法を工夫して行っていく必要があります。

6.メディアの多様化と新しい表現技法

 1970年代からヨーロッパでは、道路等のメンテナンスを税金だけでは賄えないので、電線類地中化に伴う変圧器や自転車置き場などのストリートファニチャーに告知広告(第三者広告)を設置し、その広告媒体料にて設置費用や維持管理費をねん出するようになっていきました。近年、日本でも街路灯や上屋付きバス停への第三者広告の掲出が行われ、維持管理費用を捻出するようになってきています。
 メディアの多様化が進み、デジタルサイネージ(電子看板)やプロジェクションマッピングなどでの新しい表現方法で広告物が掲出されるようになってきています。デジタルサイネージは、日本ではオリンピックに向けて、外国人旅行者が必要な情報を多言語で得られるような高機能型観光案内図の設置など公共的な看板においても利用されています。
 新しい時代に入っていく中でプロジェクションマッピングを広告物とみなしていくには、法律的にどのように考えていくか難しく、東京都では実証実験を行うなど検討はされてきています。建物に広告物を映し出していく表現方法はスケール感も大きく、デザイン的にも非常に魅力的なものとなっています。今後は、更にメディアが進化し、様々な方法で掲出される広告物が増えていくでしょう。 
  
エリアマネジメント広告 プロジェクションマッピング             

 まとめ

 屋外広告物の歴史的変遷から海外事例も交えた現代の屋外広告物事情など興味深い講演を行っていただきました。屋外広告物の魅力などについてお伝えできたことで、参加者皆様の意識啓発に繋がり、八王子の屋外広告物のあり方について考えていただくきっかけづくりが出来たのではないかと感じました。これからも、八王子らしい景観まちづくりを推進していくために、より多くの市民の皆様に興味を持っていただけるような景観セミナーの企画について検討していきます。
 参加者からのアンケート結果は好評で、屋外広告物について多様な内容の講演で興味深く聴けた等のご意見、本セミナーに対する共感を多数いただくことができました。
 参加者のみなさま、そして田口講師に厚くお礼申し上げます。

このページに掲載されている情報のお問い合わせ先

まちなみ整備部まちなみ景観課
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