第16回都市景観セミナー

更新日:平成28年6月29日

ページID:P0009526

印刷する

第16回都市景観セミナーを開催しました

第16回の都市景観セミナーは、11月1日(土曜日)クリエイトホールの視聴覚室で行い、30名の方々にご参加いただきました。ありがとうございました。

日時:平成20年11月1日(土曜日) 午後2時から午後4時
場所:クリエイトホール 視聴覚室

今回は、都市プランナーの小出和郎(こいで かずお)さんを講師にお招きして、テーマを「景観法の活用と工夫」と題し、景観まちづくりに取り組む意義などについて考えました。

セミナーの様子

講師 小出和郎さん プロフィール

都市プランナー・株式会社都市環境研究所代表

東京都出身。昭和46年東京大学工学部都市工学科卒業、昭和50年同大学院修士課程修了。プランナーとして岡山県倉敷市を始め、数々の自治体の景観に関する調査、計画業務などに携わるとともに、東京大学工学部、長岡造形大学、建設大学校講師などを務める。著書に「アーバンデザインの現代的展望」(共著、鹿島出版会)、「協議型まちづくり」(共著、学芸出版社)、「条例による総合的まちづくり」(共著、学芸出版社)など

小出さんの講演の概要

景観法制定までを概観する

昭和30年代まで

景観法までを概観する1

昭和30年代頃までは日本の風景は余り変わらず、良い時代だったのではないでしょうか。大分の豊後高田では昭和30年代のまちなみを再現しており、非常に人気があります。どこか日本人の気持ちの中に、昭和30年代を何か懐かしいと感じるものがあるのかもしれません。

高度経済成長期

ところが高度経済成長の時代が来ると、都市にいろいろなものが集中し始め、風景が急激に変わり始めました。もう一つ、土地の補償制度も整備されるようになり、土地の所有に対する意識もずいぶん変わってきました。風景も人の気持ちも、この頃からどんどん変わってきてしまった印象です。

都市計画の役割とは

このような流れの中で日本の都市計画を考えると、施設の計画が主体で、困ったことに都市計画マスタープランにはあまり威厳がありません。都市計画の役割は本来、コントロール、いろいろなことを規制することにあります。しかし、それが人の気持ちの中でうまく機能せず、自分の思うようにやるといった積み重ねで、まちがなかなか綺麗にならない。なんとなく絶望感みたいなものを感じています。

でも、都市というのはみんなで集まって住むところだから、みんなで何かを決めて、みんなで実行していかないと綺麗にならない。じつは、そこが一番大きな問題です。

景観法までを概観する2

この時代、開発の一方で、保全の論争が起こります。鎌倉や京都などいろいろなところで開発計画に対する地域の大反対運動が起こり、その流れの中で景観に絡んで大きな仕組みが出来ます。古都保存法(昭和41年)と伝統的建造物群保存地区制度(昭和50年)です。

古都保存法の特徴は、開発に対して強硬な規制、場合によっては土地の買収までできるもの。一方、伝建地区は、建物単体を指定する重要文化財とは異なり、まちなみを面的に保存するものです。


住民、地域の活動が制度を変えた

昭和40年代から昭和50年代にかけて、このような制度が出来ていますが、ポイントは住民や地域の活動が国の制度を変えてきたということ。この頃、風土やまちなみを保存する制度は、国にはありませんでした。むしろ、市町村の条例による取り組みが全国に広がり、地域のまちづくりに対するサポートが必要になり、国がそれを制度化しました。

「景観」という言葉も、それ以前は「美観」や「伝統文化」といった言葉を使っていましたが、この時期に定着したようです。

その後現在まで

景観法までを概観する3

このような経緯で、景観が注目されるようになりますが、それからが少し形を変えてきます。それまでは歴史的な景観が対象でしたが、いくつかの都市で自分達のまちの景観をもっと考えよう、といった動きが始まります。横浜市のアーバンデザインという施策や神戸市の都市景観条例などです。

また、当時、地区計画制度ができ、もっと小さな地区でいろいろなことを考えなければならない、といった考え方に都市計画が変わってきます。

それからこの時期、オイルショックの影響で大都市からみんな地方へ帰った時代があります。これからは地方の時代だ、ということで、地方の個性を活かしてまちを綺麗にしようという動きがありました。その結果、1990年(平成2年)頃から地方の景観条例がどんどん出来、2000年(平成12年)には全国で400を超える数になりました。

景観法までを概観する4

また、まちづくり条例で地域のローカルルールを打ち出すという動きが、景観やまちづくりの領域でも起こり、湯布院や真鶴といったごく小さな町が始めるようになります。

21世紀に入ると、地方分権で都市計画は地方の自治事務に完全に変わり、地方が自由にやって良い時代に変わりました。

そして、平成15年には国交省が「美しい国づくり政策大綱」を出し、これまでのまちづくりの国の施策を反省し、景観を国民共有の価値として取り組んでいきましょう、と書いてあります。また、その中には景観に関する基本法制を定めましょう、と書いてあり、平成16年の景観法の制定に至ります。

景観法の現在

景観法の現在

景観法というのは、市町村が工夫して取り組んできた積み重ねを国が認め、それを基本の法制にしたという構図になっています。古都保存法などの例と同じように思えます。国が地方自治体の成果を認めて、景観条例に法的根拠を与えました。

ただ、景観法は直していかなければならないところがあります。まだまだ景観法に頼りすぎるのは、少し問題があります。


景観計画の役割と課題

歴史的な風景、懐かしい風景、そういった良い景観を守ることに関しては、景観法はかなり良く出来た法律です。しかし、悪い景観を排除する、ということに関しては、景観法だけではなかなか難しい。ただ、色々な法律を使いこなして、連携することによって、かなり出来そうです。

問題は、それでまちは綺麗になるのかというと、まだまだだなぁと思います。それぞれの市町村で、個性に合わせた知恵と工夫が必要です。行政だけでなくて住民も一緒になってその知恵を出さなければなりません。

たとえば、熱海市の例。景観法だけでなく、4つの仕組みを同時に動かしています。景観計画の策定、建物の高さを制限する高度地区、建物の用途を制限する特別用途地区、より規制の強い景観地区。それから、屋外広告物条例の改正も行いました。また、専門家のみで構成される景観デザイン会議を設置し、建物のデザインや周辺との関係性などについて審査をする、といったことをやっています。

熱海市景観計画の特徴

景観計画

景観デザイン会議

景観をよくするために

数値基準だけを守ればデザインが良くなり、まちが綺麗になるかと言うと、現実にそんなことはない。しかし、役所は数値が基準以内なら意見を言うしかない、というのが今の仕組みです。もし数値基準だけだとすると、デザインは良くならない。

それで、私はこんなことを考えています。国が景観法を考えている時期に、私は仲間と研究会をして、風景基本法を作ろうよ、という13の提言を出しました。

風景基本法への提言

風景基本法への提言7から13

景観法をどう活用するか

景観法をどう活用するか

基準や手続さえ守れば良い景観ができるとは思いません。地方の知恵と工夫が必要です。

熱海市のほかにも、京都市では大文字山が見えるラインから飛び出る建物は審査した上で認めない場合もある、といったことを始めています。また、小田原市では一般地域とは別にお城の周囲に関しては別のルールを定めています。八王子でどうするかはまだ分かりませんが、少なくともデザインをどう扱うかと言うことは考えて欲しいと思います。

地域の管理主体

一方で、住民もそろそろ、役所任せにせず自分達で責任を取る、ということを考えなければいけない。昔は、地区のみんなで相談して掟を作ってきました。ある時期からそれをみんな役所に任せてしまった。が、結果としてそれがうまくいっていない。最近の動きを見ていると、ひょっとしたら役所はそれを放り出しつつあるのではないか、という危機感があります。その分だけ、住民が、事業者が、民間がやらなければならない。

景観の評価、デザインの評価1

また、景観の評価が必要ですが、これは地方自治体にはなかなか難しいと思います。書類審査でもダメ、数値基準でもダメ、市町村に専門家はいない、場合によっては建築の専門家も頼りにならないケースもある。景観審議会はあるが、なかなか議論が難しい。一方では、経済で決まる景観というものもあり、景観よりも容積率のほうが大事だと言う人がまだまだいます。

景観の評価、デザインの評価2

建築家に任せておけるかというと、建築基準法の仕組みがそうだから、敷地のことは考えるがなかなか周りのことを考えてくれない。建築、都市計画、ランドスケープ、そういう専門家が束になって、こういう問題を扱う仕組みを考えなければいけない。イギリスにはそういうCABEという機関があります。彼らの言葉で「デザインレビュー」と言いますが、日本でもそろそろ、建築やデザインをきちんと評価する仕組みを持たなければいけないな、というのが最近の思いです。

最後に

良い景観を守るには、景観法を使いこなす。税金のことまで含めてやってください。

広告物や高い建物、変なデザインの建物などは、屋外広告物法や都市計画法の高度地区などと連携して、景観法を活かすように組み立ててください。

ただし、美しい景観をつくるためには、まだまだ景観法だけではダメだと思います。いろんな知恵や工夫が必要です。八王子でも八王子らしい何かを考えて下さい。もちろん市民との連携も考えながら、良い環境、良い景観を守る活動をセットにして景観計画を運用して欲しい。

行為の制限とか基準作りとかそういうことだけで終わるのであれば、面白くない結果となる可能性が大ありです。時間はかかるかもしれませんが、八王子では、市民の皆さんと一緒になって頑張って欲しい、というのが私が言いたい最大のことです。

最後に

このページに掲載されている情報のお問い合わせ先

まちなみ整備部まちなみ景観課
〒192-8501 八王子市元本郷町三丁目24番1号
電話:042-620-7267 
ファックス:042-626-3616

お問い合わせメールフォーム