第15回都市景観セミナー

更新日:平成28年6月29日

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第15回都市景観セミナーを開催しました

第15回の都市景観セミナーは、平成20年7月12日(土曜日)クリエイトホールの視聴覚室で行い、28名の方々にご参加いただきました。ありがとうございました。

日時:平成20年7月12日(土曜日) 午後2時から午後4時
場所:クリエイトホール 視聴覚室

講師は、照明家で八王子市まちづくりアドバイザーの角舘政英さん(ぼんぼり光環境計画代表)です。特徴的な会社名、「ぼんぼり」は、もともとホームページのアドレスとして使っていたものが、現在の会社名になったとのこと。

今回は、「光によるまちづくり」をテーマに、角舘さんに講演をして頂きました。

セミナーの様子

角舘さんの講演の概要

照明デザイナーはいつも何を見ているのか

光を扱う者として、青空や夕やけなど、自然の中の現象を見るようにしています。色彩的な感覚、反射、キラメキなど、色々なヒントが隠されていて、商業施設の照明計画をする際にも、何か自然の要素を取り入れられないかと考えています。

自然のひかり

また、海外や日本の地方都市などいろいろな街を見るようにしています。高い所から街の夜景を見ると、その都市の構造が見えてきます。

夜の都市の眺め

街の中に視点を落とすと、ヨーロッパの街は、シンボルが目立つ街の構造になっています。直線的な道の先に寺院などがあり、象徴的なつくりです。日本でいえば神社やお寺の参道のようなもの。ヨーロッパでは、そのような考え方が街の随所にあります。特に、広場と道の関係が象徴的につくられている。例えば、スペインのマドリッド、フランスのパリなど、直線的な道の端に広場をつくり、郵便局などの公共施設や凱旋門など、象徴的な施設を配置しています。

街の象徴が目立つ都市構造

街路の光環境をどうつくるか

日本の街も象徴的に整備されていますが、バブル時に活性化などの名目で補助金を使い、凝ったデザインの街路灯やボラードなどを配置した例が、日本各地に見られます。しかし、現状を見てみると夜間の人通りがほとんどなく、その光環境はいったい誰のための、何のためのものなのかと疑問に思わざるを得ません。

お金をかけて整備された商店街の夕刻

シャンゼリゼ通りの夜の景観

広い道路を持つパリのシャンゼリゼ通りは道路が目立っています。なぜでしょうか。

直線状の道に、同じ街路灯が直線状かつ等間隔に並んでおり、配列のルールが最終的に景観として見えてきます。


ベニスの夜の景観

それに対して、ベニスの例。街が目立っています。なぜでしょうか。

ベニスの道は狭いので、道路に街路灯がつけられません。そうすると街の照明は建物に付けざるを得ず、しかも誰も建物の真正面にはつけたがらないので、自然と建物の際の部分を照らすようになります。このように、街並みのルールに基づいて照明灯をつけると、結果として街が目立ってきます。


街の目立つ照明配列

このような例は、他にフィレンツェなど、ヨーロッパにはたくさん見られます。


ベトナムの市場

ベトナムの市場の様子。凝ったデザインの照明ではなく、どこにでもある裸電球を使っていますが、活気や賑わいを感じられます。先ほどの、お金をかけて整備した日本の例とは対照的です。灯りも使い方によって、その印象が変わってきます。


ニューオーリンズ

ニューオリンズの街の様子。道は明るくありませんが、バーの中が明るくなっています。結果として街が目立ち、特有の景観が出来上がっています。


日本にも特有の光がたくさんあります。お祭りの縁日、灯篭流し、元旦の神社の松明、提灯のある盆踊りの風景など、日本人なら誰でも分かる日本特有の光です。

日本特有の灯り

全国一律の基準や仕様に対する疑問

さいたま新都心のデッキで照明計画を行った事例です。デッキの床やベンチを光らせています。ということは、公共施設として床面の明るさの基準(国交省の照度基準)を満たしていません。人は歩く時、階段などの段差以外はほとんど床を見ていないので、誘導する光があれば良いと考え、人がつまずかないで歩けること、つまり、転ばない、ケガをしないことを最低限の基準として照明計画を行いました。結果として、デッキがバリアフリーで整備されているため、何も問題は起きていません。

さいたま新都心のデッキ

国がつくった照度基準は、商業地域の交通量の多い、少ない、住宅地の交通量の多い、少ないの、大きく四つに分けられています。商業地で交通量が多いところは20ルクス、一番明るい基準になっています。

しかし、防犯性を考えた時、人がいっぱいいるところの照度は低くて良いのではないかと考えています。むしろ、住宅地の人通りが少ないところは女性にとって非常に怖いと感じる場所。防犯性を考えた場合、現在の基準に疑問を持っています。

国土交通省の照度基準

国の基準を守って何か問題が起こった場合、基本的に国に責任が生じます。しかし、「性能設計」の考え方で整備した場合、設計者、施工者、管理者に責任が発生する。つまり、役所主体で整備を行うとき、基準や仕様を守った方がやり易い訳です。

ただ、照度基準には良い面もあります。建築も土木も景観も、まったく分からない素人でも、最低限の質の都市空間をつくっていけます。

まちづくりと灯りの使い方

今までの街路は、道をどのように整備していくか、が主題でした。しかし、「街路空間」を考えた場合、周りの建物など様々な要素も考えて整備をしていかなければいけません。そのためには、住民や地域を巻き込んでいかなければならない。官民の境界部分をいかに曖昧にしていくか。それが「まちづくり」だと考えています。

安心感を高める灯りの使い方(横浜元町仲通での実験)

街路空間のへこんだ部分に灯りを配置し、境界部分を認識させる実験を行いました。道路はバリアフリーなので、路面が明るくてもあまり意味を持ちません。人は明るいところから外れたところに危険を感じます。そこで、へこんだ部分を明るくすると安心感が上がるのではないかと考えました。

横浜元町仲通での実験(左:現況 右:実験時)

アンケート調査の結果、街路灯を消した方が安心感が増した、と評価されました。見通しが良くなった、周りの風景がよく見えるようになった、という項目の評価が上りました。

この実験の結果から、重要だと分ったこと。ひとつは、空間認知。照度が低くても空間、領域を認知する灯りがあると、安心感が高まる。もうひとつは、対人認知。暗いところに人がどれくらい隠れていそうか。ひたすら明るくしなくても、この二つを満足することで安心感を高めることにつながります。

住民参加のあり方(岩手県大野村での実験)

街路灯を整備する際に、安心できるところに最小限の光を配置する実験を行いました。ここでは、どのように住民参加を行うか考えました。「街路灯を整備します、照明をどのようにしましょうか。」と聞くと、殆どの人は「明るくしてください。」と答えるもの。まちづくりを住民参加で行うためには、一般の方に対して専門家や行政がメリット、デメリットを正確に伝えなければなりません。

住民参加は必要です。でも、住民の意見を鵜呑みにしても失敗します。重要なのは「参加の程度」です。

そこで、大野村では三つのお願いをしました。一つ目は、電源を借りること。二つ目は提灯をどこにつけるか、目的に対して効果的な場所を一緒に考えること。三つ目は色々な形や色の中から自らの提灯を選んでもらうこと。

大野村での実験(左:現況 右:実験時)

いきなり空間、街並み、景観という概念を理解するのは非常に難しいことです。このように参加してもらうことで、そういう人たちの気持ちを満足させることを考えました。すると、出来あがった風景を自分達でつくったと感じてもらうことができ、住民の考え方も変わってきました。

街を感じられる灯り(富山市八尾町での実験)

「おわら風の盆」で有名な街。観光地の育成をテーマに、ピークのお祭り時だけでなく平均的に人を呼びたい、ということで街並みの整備を行っています。

川にかかる橋の例です。歩行者専用の橋で、国の基準で照明が配置されています。八王子駅前の商店街と同じくらいの照度基準を守っており、八尾で一番明るい場所です。ここで、住民が安心して歩ける灯りのレベルを実験してみました。

八尾町での実験時の様子(左:橋の様子 右:橋からの眺め)

街路灯を消し、行燈のような灯りを30メートル間隔で配置すれば、光をたどって十分に歩けることが分かりました。エネルギーに換算すると、約400分の1です。また、もうひとついいことがありました。街路灯の下ではまぶしくて何もみえず、ただ橋を渡っているだけでしたが、自分達の住む街並みや川の流れ、星などを感じることができるようになりました。

やはり、日本の街路を大きく四つのパターンに分けている照度基準に疑問を感じます。八王子の駅前も新宿の歌舞伎町も、地方都市の商店街も、すべて「交通量の多い商業地」に分類され、おなじ20ルクスとなってしまいます。

その街「らしい」ライトアップ(世界遺産・五箇山相倉集落での実験)

観光協会の方からライトアップの相談を受けました。以前、合掌造りの家をライトアップする企画がありましたが、住民から「夜に観光客など来て欲しくない」と反対があり、失敗したとのこと。今回は、ライトアップではなく「防犯性を高めるための照明実験をします」と説明をしたら、住民の反対は一人もありませんでした。

人を誘導する考え方で光の環境をつくり、結果的にライトアップと同様の効果が生まれ、新聞やテレビなどで紹介され観光客がたくさん訪れました。住民からも「(同じ世界遺産の)白川郷のライトアップと違って相倉集落らしい」との評価を貰っています。

相倉集落での実験

夜間景観とは何か

四つの要素が、「らしさ」をつくると考えています。

  1. 地域の人々の生活を感じることが大切。生活とは文化と言い換えられます。
  2. 地域にあわせた安全性を考えること。たとえば、誰も歩かない田舎道なら、照明は要りません。また、「川岸の歩道はマムシがでるので、明るくしたい」などです。
  3. 健康という概念。最近、ウォーキングを行う人がいっぱいいます。そういった人々も安心して歩けること。
  4. 地形的財産。山、川、橋、坂道などにはたいてい名前がついています。このような象徴性が高い場所を認識させること。

こういった四つの要素に忠実に街をつくっていくと、必然的に地域らしさが生まれてくると考えています。安直にモニュメントなどを立てたりするのではなく、地域の視点に立って、その「らしさ」をじっくり考えることが必要です。

このページに掲載されている情報のお問い合わせ先

まちなみ整備部まちなみ景観課
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電話:042-620-7267 
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