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第11回都市景観セミナー
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第11回都市景観セミナーを開催しました
第11回の都市景観セミナーは、平成19年3月31日(土曜日)クリエイトホールの視聴覚室で、22名の方々にご参加いただき開催しました。
日時:平成19年3月31日(土曜日) 午後2時から午後4時30分
場所:クリエイトホール視聴覚室
セミナーの講師は、工学院大学工学部教授の倉田直道さんです。倉田さんのご専門は、主に都市デザイン、都市計画、まちづくりに関する研究で、人間と環境という対象を介して、建築と都市との新たな関係性の構築について研究を重ねておられます。
今回は、「景観とまちづくり~街の活性化と景観まちづくり~」をテーマにご講演いただきました。
景観の評価基準
今日のように景観が取り上げられるようになったひとつの背景として、バブル経済の崩壊後、人々の意識が生活の質の向上に向いていったことや、環境に対する関心が高くなったことがあります。景観というものが、余裕のあるときに少しまちをお化粧すればよいという位置付けから、大切な公共的価値として意識されるようになってきました。
では、人々の共通認識としての景観の美しさとは何でしょうか。
「美とは何か」という議論をしていても共通の美しさにはなかなかたどり着きません。都市の魅力づくりや個性化という風に捉えることによって景観の取組みがよりわかりやすくなります。
そのようなことから、景観の評価基準として、歴史性、風土性、人間性によって評価すると効果的です。
都市の魅力は、住んでいる人たちの意識や活動によって表れてきます。例えば、商店街のモールの舗装を綺麗にしただけでは街の魅力にはつながらない。商業活動を含めて、そこで生活する人々により展開される活動が健全化されることにより、街が本当に生き生きしてきます。
景観とまちづくり
地域の価値を発見し、かつ、共有できるものへと育んでいくことは、一般的なことであり、そのことからまちづくりと景観は非常に相性がいいと言えます。商店街などは、人々の活動が見えてこないと景観としての魅力が出てきません。それを象徴するのが賑わいで、賑わいを演出することも大事なことです。景観のあるまちづくりは地域の活性化につながってくるということが大切なポイントです。
地域の価値が認識されて共有されている場所は、文化に敏感な人々を引き付けます。景観の取り組みを行っている地域には多くの人が移り住んできます。それにともなって企業も移ってきて、よい効果がどんどん出てくる。生活環境の質が保たれている地域には多くの住民が集まる。八王子にはそういう要素がたくさんあると思います。
さらに、地域経済が活性化され、商店街が生き生きしている場所は、新たな産業活動を誘引し、新しい産業を生み出すことが期待できます。住民と行政が協力して地域の運営管理がされている場所は地域力の向上に繋がると考えています。
そういう意味を含めて景観というものは様々な可能性を含んでおり、非常に期待できると考えています。
アメリカ合衆国コロラド州ボールダーの事例です。
ボールダーは、高地でありながら引退後には多くの人が住みたいという人気の地区。しかし、希望者全員を住まわせるのではなく、住宅開発も時間をかけて行い、開発地域と保全地域を区分し、緑の保全についても基金を募って買い取るなど、緑の保全や環境を含めて都市の成長をコントロールしています。その結果、住民の価値観が感じられる街になっています。
まちの活性化と景観まちづくりの10の戦略
講義の後半では、「まちの活性化と景観まちづくりの10の戦略」についてお話しいただきました。
1 街の成り立ちを考えること
歴史や地形を読み取り物語性、場所性を大事にしていくことが大切です。
2 水と緑を活かすこと
環境の質が良くなると、様々な人が街に入ってくる。そういった人たちは、環境を維持し向上していくことに働きかけを行っていきます。その結果、街の風景の中に人々の愛着や価値観を感じることができるようになります。
3 パブリック・ライフのあるパブリック・スペースをつくること
買い物だけではなく、その場所を楽しみながら歩くことができる。賑わいのある、このような状態のことを「パブリック・ライフ」と呼び、このような空間を街の中に実現させていくことが大事です。
これは単に広場を造ると言うだけではありません。最近見られるオープンカフェのように、商店街の中のイベントを通して、様々なアクティビティーを実現させようと努力しています。
4 楽しく歩ける街にすること
街に来たら車を置いて街の中を歩いていただく。そういう意味で歩ける街になること。移動手段として、利便性の高い公共交通をきちんと整えていくことで、街の姿を変えていく。
フランスの事例。
市長の英断で、歩行者優先道路を整備しました。街の中心に公園を造り、公園の下は駐車場になっています。公共交通を導入し、電車のデザインも非常に綺麗で、軌道自体も芝になっている所があり、非常に気持ちのいい街になっています。停留所もしゃれたデザインで、街の景観の一部になっています。
5 街のデザインの質を高めること
各々の要素が質の低いデザインだと、街は魅力的にならない。地場産業を活かした建物なども、街並みを形成するデザインの一つになります。
少し工夫すると駅前広場のイメージは変わってきます。歩道と車道を一体的に舗装することで、歩行者を優先している広場だと伝わります。
これは、集合住宅の街路部分を木材の舗装にして、人にやさしい環境づくりが行われている事例です。
6 多世代が安心して暮らせる街にすること
多世代が安心して暮らせるということが、街の姿を変えていきます。
最近は、街の中心に人を住まわせるということが、大きなテーマになっています。街の中心に住むことにより、仕事が終わって家に帰り、30分もかからず自宅で着替え、近くの公園に来て楽しんでいる。景観としてこういう姿を見かけると、住んでいる人々のライフスタイルを感じることができます。
7 環境にやさしい暮らしを可能にすること
ドイツの環境首都と呼ばれているフライブルグでは、中心街から車を追い出し、自転車や歩行者が街を巡回できる街づくりをおこなっています。
8 暮らしを支える機能をそろえること
日本では、中心市街地が衰退していると言いいながら、公共施設を郊外に移しています。
アメリカのポートランドは、以前は中心市街地が衰退し、歩くのも怖いくらいの街でした。しかし、街づくりの施策として中心市街地に美術館や図書館など公共施設を多く建て、商業施設についても街の中心に配置していきました。それらの施設には公共交通手段で行けるようになっており、今では「住みたい街」と言われるようになりました。
9 起業を促す環境をつくること
アメリカのセントポールでは、街なかにアーティストが活動できるスタートアップのための場所をつくっており、それが街の姿勢として表れています。IT企業が集まるサイバービル等も街の中心に造り、成功事例の一つになっています。
10 街を育てる人材・組織を育成すること
アメリカにはBID(Business Improvement District)という仕組みによって活動している組織があり、街の姿を大きく変えています。
地区を指定して固定資産税にプラスした形で賦課金を徴収し、土地のオーナー同士がお金を出し合って土地の価値を高めようとしています。実際の活動として環境美化や街の建物を建てるときのガイドラインをつくったり、建物の外観改善のプログラムをつくったりといった公共空間の整備や、産業振興やマーケティングなどのサービスを行っています。地域レベルの自治体組織に近い形と言えます。
ロサンゼルス近郊のサンタモニカの例。夜まで人の流れが絶えず、賑わいの絶えない街です。
1970年頃はアメリカの中心市街地は、人通りが殆どないシャッター通りでした。それが街に組織をつくり、沿道に商店を誘導したり、道を造り変えたりしていきました。市の条例で映画館を造るときは沿道に限るとし、また、低層階にはお店をつくることとし、例えば、レストランではオープンカフェを店先に出して賑わいを演出しています。
しかし、そこには入り口をきちんと確保するようになどの細かいルールがたくさんあります。また、ストリートパフォーマーやミュージシャンについてもルールがあり、夜まで賑わいのある街になっています。ごみも地元のまちづくりの組織が電気自動車で回収しています。
ニューヨークのマンハッタンの例。
防犯や街の案内について、地元のBIDによる組織が行っています。かつてはホームレスが住んだり、麻薬の取引等が行われたりした公園が、今では気持ちの良い場所になっています。人が街の中にでてくるということは、結果として治安の向上につながります。まちづくりを通して景観形成が行われている事例です。
このページに掲載されている情報のお問い合わせ先
- まちなみ整備部まちなみ景観課
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〒192-8501 八王子市元本郷町三丁目24番1号
電話:042-620-7267
ファックス:042-626-3616
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