1970年代頃まで、日本の文学の主流は明らかに「純文学」でした。ミステリやホラー、SFなど娯楽性の高い作品は「大衆文学」と呼ばれ一段低いものと見なされていました。

それから50年。今や「大衆文学」は日本の文学・出版界の中心として読者の支持をうけ、多数の人気作家を輩出するとともに、「純文学」「大衆文学」という分類までも過去のものとしてしまいました。森村誠一は、こうしたミステリの黎明期にデビューし、驚異の執筆ペースと読者の圧倒的な人気で、その地位を押し上げました。

ミステリの地位向上に尽力し、小説の映像化(メディアミックス戦略)に先鞭をつけ、時世を反映したテーマに次々と取り組み、自らの老いまでも赤裸々に綴り、なお、亡くなる直前まで小説を書き続けたいと願った推理小説家・森村誠一の「作家の肖像」について話しします。

講師：　町田市民文学館ことばらんど　学芸員 山端 穂さん