スペシャルゲスト対談

アスリートを育むまち、八王子

吉田愛×上田瑠偉

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幼少から八王子で育ち、セーリングで三度のオリンピック出場を果たした吉田愛さん。
八王子に居を構え、世界の舞台へと飛躍するトレイルランナーの上田瑠偉さん。
二人のアスリートに、それぞれの競技の魅力、そして八王子の魅力を語っていただきました。

吉田 愛 (よしだ あい)

吉田 愛 (よしだ あい)

1980年生まれ。幼少時から八王子市で育つ。ベネッセセーリングチーム所属。2人乗りの小型ヨットを操るセーリング470級で3大会連続のオリンピック出場を果たす。リオデジャネイロ2016大会では過去最高の5位入賞を達成。市制100周年「八王子100年応援団」団員。

上田 瑠偉 (うえだ るい)

上田 瑠偉 (うえだ るい)

1993年生まれ。長野県出身で、現在は八王子市在住。コロンビアスポーツウェアジャパン所属。山野を駆け抜けるランニングスポーツ「トレイルランニング」を早稲田大学在学中に開始。2016ユース世界選手権SKYRACE優勝など、世界の舞台で活躍中。

大自然の中で勝負する二人

まずは、お二人それぞれの競技の魅力を教えてください。

吉田: セーリングはヨット競技なので、自然の力を利用します。風を読んで、水の上を自由自在に走り回れるのが醍醐味です。風をうまく読めば女性でも男性に勝てますし、小柄な日本人でも世界で活躍できます。そこが魅力で私自身も長く競技を続けています。

上田: 僕はトレイルランニングという競技を始めてまだ3年ぐらいなのですが、長野県の北アルプスの麓で育ったので山は小さい頃から身近に感じていました。トレイルランニングは大自然の中を駆け回る快感が魅力です。木々の中を走っていても四季折々で見える自然の表情は違います。山の稜線に出れば見晴らしのよい景色が広がりますし、岩場を下るときには心地よいスリルがあります。

吉田: いろんな環境の中を走るんですね。

上田: 大会によっては雪の中を走ることもあれば、川を渡ることもあります。他にも砂礫や岩場など、いろいろなサーフェス(地表)を走るので判断力も必要です。私たち人類にはいろいろな道具がありますけど、トレイルランニングでは自分の足、自分の体一つで大自然の中を進んでいく。それが醍醐味ですね。

動物たちとの予期せぬ遭遇も

競技中に動物に遭遇することもあるそうですね。

吉田: 沖縄の海だとイルカやクジラに遭遇することがありますね。それから5~6m級の大きなサメもいました。こちらとしては対処のしようがないので通り過ぎてくれるのをヨットの上でじっと待つしかありません。転覆しないことだけに集中します(笑)。

上田: 僕は山の入口付近の、まだ民家が見える地点で子熊を見たことがあります。「これはこのまま進むと親熊がいるな」と思って、急いで引き返しました。フランスのレースではアイベックスという角の長い、野生の山羊の一種が現れたことがあります。夜行性なんですけど、日が暮れた後のレース終盤で、登りのコースを先導するかのように前を走ってくれて、気分的にも楽しかったですね。あとヨーロッパだと牛が放牧されている地方も多いんですけど、コース上に牛がいることもあって、そこへ僕たちランナーが「どいてくれー!」という感じで突っ込んでいくこともあります(笑)。

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東京にいながら四季を感じるまち、八王子

ここからは八王子に関するお話を伺います。吉田さんは3歳のときに高尾山に登ったそうですが。

吉田: さすがにそのときの記憶はなくて、親から聞いて知ったんですけど、親が言うにはちゃんと自分の足で頂上まで登ったそうです(笑)。

上田: 最近の高尾山は小さなお子さんもよく登っていますよね。

吉田: 私の実家では3歳になると必ず高尾山に登るという習わしがあるんです(笑)。私は長女なんですけど下の二人も登りましたし、妹の子どももみんな3歳になったときに登っています。

上田: すごい。七五三のような節目の儀式なんですね。

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吉田: 私は大学卒業後に八王子の実家を離れたんですけど、いまでも高尾山にはときどき登っています。「ちょっと行ってこようかな」という感じで半日ぐらいで気軽に登れるのが魅力ですね。紅葉のシーズンも素敵ですし、大好きです。上田さんは今、八王子にお住まいなんですよね。

上田: そうです。平成28年の1月からです。八王子か丹沢が引越し先の候補だったんですけど、八王子のほうが山梨方面の山にもすぐ出られるし、実家の長野にも帰省しやすいという理由で八王子に決めました。山などの自然が近い立地で、なおかつ利便性も確保できるというのが大きな理由でした。大学4年間は都心に暮らしていたんですけど、八王子に越してきて感じるのは「東京という都会にいながらも四季をしっかり感じられる」というところですね。山に近いエリアでは冬は雪が積もりますし、夏は夏らしい暑さを感じられるところも好きです。

吉田: 八王子は空気がきれいなところが好きです。都心に出かけて、電車で八王子に帰ってくるときに、電車のドアが開くたびにどんどん空気がきれいになっていく気がするんです(笑)。「ああ、戻ってきたなあ」という気持ちになりますね。ほっとします。

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温泉&グルメで、リラックス&リフレッシュ

吉田: ふだん八王子でよく行く場所ってありますか?

上田: 温浴施設ですね。「(八王子健康ランド)ふろッぴィ」とか、高尾山口駅に新しくできた温泉(京王高尾山温泉 極楽湯)とか。

吉田: 私もよく行きます(笑)。大きなお風呂のある施設が大好きなんです。

上田: どんな山に行くとしても周辺には温泉があることが多いので、登山でもトレイルランニングでも、終わった後に温泉で汗を流すのをすごく楽しみにしています。山と温泉は僕の中では完全にセットになってますね(笑)。

吉田: 私の場合は新しい温浴施設ができると必ずチェックしに行きます(笑)。八王子駅の近くの八王子温泉やすらぎの湯にも行きました。時間があれば、お風呂に入って、お昼を食べて、マッサージを受けて、またお風呂に入ってとか、半日ぐらいいることもありますね(笑)。

上田: 僕も長いときは2時間ぐらい浸かっていることがあります(笑)。

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八王子の「食」に関してはいかがですか?

上田: 自宅の近所に富士森公園があるんですけど、その前に「バーゼル」というカフェがあって、休日の朝はモーニング・ビュッフェをやっているのでよく食べに行きます。しっかりしたスープと野菜が豊富なサラダがあって、パンやヨーグルトが食べ放題。バランスの良い食事が摂れるのがありがたいです。

吉田: 私の場合は、弟がラーメン好きなので、一緒に八王子ラーメンを食べたりします。あと、たまに家族のお祝いごとがあったりしたときは、この高尾にある料亭「うかい鳥山」に来ます。個室になっていて、ガラス越しに美しい日本庭園を眺めながら食事を楽しめるのがうれしいですね。

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アスリートの目から見た八王子

アスリートの視点から見たとき、八王子というまちはどのように映っているのでしょうか。

上田: 自分の練習場所としては、高尾山はもちろん、浅川の河川敷も信号がなくて長い距離を走れるのでよく使わせてもらっています。自宅の近所には富士森公園の陸上競技場があります。最近では珍しい土のトラックなんですけど、朝早くから夜遅くまで一般開放されているのがすごくありがたいですね。それから近くの盲学校のランナーの方が伴走の方と一緒に走っている姿もよくお見かけしますし、パラリンピック日本代表のウェアを着ている方もときどき走っていて、そういったハンディキャップのある方のスポーツ参加といった部分でも盛んな環境があるのかなと感じています。あと南大沢にも上柚木陸上競技場がありますし、アスリートにとっての競技環境が充実しているという印象がありますね。

吉田: 私は八王子の実家に帰ってきたときにジョギングしたり体育館に行ったりする程度なんですけど、実家の近くに「エスフォルタアリーナ八王子」という新しい体育館ができたのでそこでよく体を動かしています。あとジョギングに出ても、自分がいま住んでいるところよりも歩道の幅が格段に広くて、歩行者とも余裕ですれ違えるので走りやすいですね。そういうふうにランナーが気軽に走れる環境が豊富にあるというのは素晴らしいと思います。

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八王子の「人」に支えられて

八王子の人の声援が、競技に臨む上で力になったりもするのでしょうか。

吉田: 私の場合は、オリンピック出場のたびに八王子駅前やエスフォルタアリーナ八王子、そして私が卒業した小学校にも応援の横断幕を掲示してくださって、あたたかいなあと思って、とても感謝しています。八王子を離れた後もこんなに応援してくださるというのは、すごくうれしいです。「がんばってください」という声をかけてくれる方も多くて、自分のやっている競技が伝わっているんだなと思えて、本当にうれしいですし、力になりますね。

上田: 僕の場合は引っ越してきてまだ1年程度なのですが、八王子周辺はトレイルランナーの方が多いという印象があります。都内にいながらも身近に山を感じられるロケーションを求めて八王子に引っ越して来る人が僕の周りにもすごく多いですし、トレイルランナーが魅力を感じて集まってくる土地なんだなと実感します。トレイルランナーが集まると、いろいろな情報交換もできますし、心強いです。仲間がいるからこそ、話をすることで知識も増えていくし、モチベーションも上がる。いい循環というか、自分にとって確実にプラスになる環境ですね。

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子どもたちへのメッセージ

では最後に、スポーツをはじめとして好きなことに熱中している子どもたちにメッセージをお願いします。

吉田: 私は小さい頃からヨットをやってきましたけど、その年代年代で常に目標を持ってやってきました。一つひとつ段階を踏んでオリンピックまでたどり着いたという思いがありますので、目標を持って好きなことを続けていってもらえたらと思います。もちろん、うまくいかないときもあるし、やめたいと思うときもあるかもしれません。それでも私自身は、目標を持ってがんばって取り組んでいけばどこかで夢が叶うときがあると信じてやってきましたし、これからもそうしていくつもりです。

上田: 周りのトップランナーを見て感じるのは、好きで続けている人のほうが大成するような気がしています。得意ということだけで続けてきていると、例えば学生だと、大きな大会が終わったのを節目に走るのをやめてしまう人もいます。本当に好きで走っている人のほうが、純粋にもっともっと上を目指したいという思いや、長く競技を続けたいという思いを持続できるのかなと。もし、お子さんが好きなことに熱中しているのであれば、周りの大人はそれを応援してあげてほしいですね。

撮影場所:高尾山・TAKAO599MUSEUM